令和元年10月27日(日)に大阪大学中之島センターで「野球科学国際特別セミナー:制限すべきか否かー投球数制限と変化球制限ー」が開催されました。
第1部のセミナーでは、MLBが勧告した「Pitch smart」の基になるデータを提供したGlenn Fleisig博士(米国スポーツ医学研究所・主任研究員)が、5年間あるいは10年間の長期にわたる追跡調査の結果や100例にも及ぶ投球障害の原因究明などの研究を実施してきたことを紹介しました。中高生の肘の手術が増加していること、年間100イニング以上投げると、投球障害発生率が3.5倍になること、疲労時の投球により投球障害リスクが36倍にもなること、投球制限ルール採用により肩の障害が減ったことなどが報告されました。座長の松尾知之准教授(大阪大学)の配慮で、日本語のスライドも同時に見れたことで、英語でのスピーチに関わらず、多くの人が理解できるものとなりました。
第2部のシンポジウムでは、今年の夏の学童軟式野球の全国大会から投球数制限を実施した全日本軟式野球連盟の宗像豊巳専務理事から連盟の行ってきた数々の取り組みをご紹介いただきました。投球数制限のきっかけは、40年前から徳島県が実施している肩肘検診の追跡調査で、小学時代の投げ過ぎで投球障害に陥り、野球を辞めてしまった選手が少なからずいることを知ったことでした。これを機に、徳島県が先行的に実施した投球数制限を全国大会にも採用することになりました。投球数制限導入による投球数減少、登板投手の増加、戦術の変化、現場からの賛否両論の意見が紹介されました。また、中学生や女子野球にも肩肘検診を拡げ、「子どもたちのためになることをしよう!」という理念の下に各地域でいろいろな取り組みが行われ始めたことが報告されました。
同様に先進的な活動をしている、新潟県青少年野球団体協議会の石川智雄副会長からも同協議会の投球数制限の取り組みが報告されました。同協議会は小学生から高校生までを統括しており、投球障害の増加を危惧する医療関係者の声掛けによって開催された研究会が発端ということです。大学との連携で大規模なアンケート調査を実施したり、医療関係者の協力により肩肘検診を行ったり、それらの結果を独自の「野球手帳」に記録し、過去の記録をいつでも参照できる工夫をしていること、あるいは独立リーグや大学野球部と連携し、野球教室やトレーニング教室を開く、などの広範で且つ現場へ深く浸透させるための努力と仕掛けが見て取れました。いずれの団体も「子どもの将来のため」に大人が何をすべきかを考えた施策を採っていたのが印象的です。
フロアからの質疑応答では、コーディネーター役の川村卓准教授(筑波大学)から高野連有識者会議での討論も踏まえた説明も加えられ、充実した内容の会となりました。
尚、この会に参加し、Webの野球専門コラム(Full-count)を配信している広尾晃氏がに会の様子を記事にしてくれましたので、こちらも是非、ご覧ください(https://full-count.jp/2019/10/29/post589496/)
日本野球科学研究会第7回大会を2019年11月30日(土)~12月1日(日)に,法政大学スポーツ健康科学部(多摩キャンパス)で開催します.
多くの皆様のご発表,ご参加をお待ちしております.
詳細は大会HPをご確認ください.
日本野球科学研究会第7回大会
テーマ :普及と育成 そのカタチ
日 程 :令和元年11月30日(土)・12月1日(日)
会 場 :法政大学スポーツ健康科学部(多摩キャンパス) (〒194-0298 東京都町田市相原町4342)
実行委員長 :平野 裕一
HP :https://gakujutsushukai.jp/jsbs2019